世界が認めるナイフメーカー職人「川村龍市」のハンドメイドナイフとは

2015.01.23  |  企画

川村龍市氏がつくる妖艶なハンドメイドナイフ

アメリカやヨーロッパでは主流のカスタムナイフ。
日本でもアウトドアラーにとってナイフはアウトドアの原点。

今回は、ハンドメイドでカスタムナイフをつくっている
川村龍市さんにスポットを当てました!

川村龍市さんとは

2004年 Japan Knife Guild/Knife Show 「Best in Show」受賞
2010年 Plaza Cutlery California/Custom Knife Show 「Best Multi Blade Knife」受賞
2012年 Plaza Cutlery California/Custom Knife Show 「Best Multi Blade Knife」受賞
(※JKG HP:http://www.jkg.jp/what.htm

日本のナイフメーカーを誇る、カスタムナイフ職人の1人。1994年からナイフ製作に携わり、2002年に本職としプロへの道へと進んだ。カスタムナイフ製作を始めて今年で21年目となる川村さんのつくるナイフは世界中からオファーがあり、数々の賞を受賞する実力者。


そんな素晴らしいナイフを作り続ける川村さんの工房におじゃまさせて頂きました。
地下へと続く階段の先には一面銀色の工房。ナイフ製作のための小道具~大道具、機材や部品となる材料などが全てここにそろっています。
川村さんがカスタムナイフを作ってい工房内

職人といえばこだわりが強く頑固で恐いイメージがあったのですが、川村さんはそのイメージとは裏腹にユーモアがあってマイペースでありながらキラリと光るプロのまなざしをお持ちのお方。

ナイフづくりに目覚めたきっかけ

日本の大学を卒業後、アメリカの大学へ進学。毎日のように銃を扱うお店に通い、いつも見るのは銃ではなくナイフコーナー。ナイフをつくるカルチャーがあるアメリカのナイフのキレイさに魅了された。「今思い返してもすごくキレイだった」と語る。日本に帰国後、グラフィックデザイナーとして活躍しながら一方でナイフの世界にのめり込み、後に師匠となる方が開いた講習会に参加し、本格的にナイフ職人としての道へと進んだ。


ナイフマガジン2009年2月号(現在は休刊中)に「日本のカスタム・ナイフメーカー」として特集されその雑誌のTOPには大きく川村さんの名前が記載されている。
川村さんが掲載されたときのナイフマガジン


カスタムナイフとは

オーダーのハンドメイドナイフの事。オーダーの方のニーズや用途に合わせ1から作りあげていく、いわば”世界に1つだけのナイフ”である。ブレードの数が多いほどその技術は高く、カスタムナイフメーカーによって数万円~数百万するものまで様々である。



川村流カスタムナイフ

川村さんは日本中のTOPレベルのハンドメイドナイフのプロ職人のうちの1人。

プロのナイフ職人といってもプロと名乗る人は多くいるが、
ナイフ製作だけで生計を立てている人は日本で15人ほどしかいないという。

本業が別であって趣味でナイフづくりをしているアマチュアは認識ある程度で100人ほど。

川村さんがつくるナイフはフォールディングナイフが主でスリップジョイント(ロックがなく出したら手の力でしまうもの)や、バックロック式スタイル(ロックリリースがついているもの)を得意としている。
川村龍市さんの作品1

川村龍市さんの作品2

川村龍市さんの作品3

川村さんのつくるナイフは1本11万円台~30万円台を超えるものも。
1本完成させるのに50~100時間以上かかるものまで様々。月に4本しか作れないという。



プロのカスタムナイフ・メーカー職人までの道のり

“消えないで残っちゃうのは嫌だ”
「年々少しづつ上手くなっていくのを実感しています。今まで作った自分のナイフを見ると、いつ作ったものなのかすぐに分かります。稚拙な部分が見えてしまって、それを見るとなんとももどかしくて逃げ出したくなるような複雑な気持ちになります(笑)」

ナイフをある程度作れるようになるには5年程。師匠に教えてもらいながら言われた通りに作っていたものの「なぜここはうまく出来ないのか」、「なぜこの通りにすればうまくいくのか」というのが定まっていなかったという川村さん。「ここをこうすれば絶対こうなる」という定石が分かって感覚が掴めるようになるまでに15年程かかったという。プロになってからは年間40~50本ほど作り、アマチュア時代から現在まで1000本以上のナイフを作り世に送り出している。



ナイフの使い道

オーダーメイドをする方の用途は2パターン。
・実用的に使いたい
・コレクションをしたい

ナイフというと怖いイメージがありますが実はネイルファイルが付いていたり、アクセサリー感覚で使える小さなナイフやフォークが出てくるものがあったり、ユーモア満載!小細工が仕掛けてあるのも興味をそそる1つの理由に挙げられる。



ハンドルの材料

主に鹿の角、貝のパール、マンモスの牙、クジラの歯など。
貝のパールはなんと2枚で2万円!
マンモスの牙は100g4000円ほど!
貴重なだけにお高いんです・・・。

パールや鹿の角
ハンドルの材料となるもの

マンモスの牙、クジラの歯
マンモスの牙、クジラの歯

貝の白いパールと黒いパールの自然な輝きはキレイで美しい
ハンドルの材料 貝の白いパールと黒いパール

かなり質の良い貝のパール。
かなり質の良い貝のパール

売り上げの8~9割がアメリカやヨーロッパからのオーダー。
アメリカ人の方は鹿の角が大好きだそう。
オーダーが入るとまずはデザインから考え始めます。



ナイフ製作の流れ

ナイフの主な部品の名称(一部)がこちら。
(もっと細かい部品がたくさん付いています)
ナイフの部品の名称

オーダー→完成したら連絡→郵送
といった流れで注文者とやり取りを行います。

デザインを描いてテンプレートをつくる

オーダーが入ったらデザインの作成、テンプレートの作成をします。
つくったテンプレートを固定し
テンプレートを固定

1枚のステンレス板に線を引いて切る
テンプレートに合わせて線をかく

いろんな部品をいろんな機械を駆使して1つずつ仕上げていく
ハンドル、ブレード、スプリングなど必要な部品が完成。
ナイフの部品を機械でそれぞれ切り取る

ナイフの刃を形成していく
ステンレス板から切り抜いただけの刃(ブレード)を物が切れるようにするため、片方を薄く削っていきます。

まだナイフとして役割を果たしていない状態
ステンレス板を切り抜いただけの刃

これを機械を使って片面を削っていきます。
機械で削る様子

薄さを均等にしていくのもプロの腕の見せ所。慎重に削っていきます。
薄く均等に慎重に削る様子

刃の真ん中に線が入り、凹凸が付いたのが分かる。
刃に凹凸が付いたのが分かる

熱処理をする
業者に委託し”焼き入れ”と”焼き戻し”をします。(よりナイフに近付けるために熱を入れて硬くした後、今度は硬すぎて折れてしまわないよう冷却して柔らかくする作業)


ナイフの刃を鏡面になるまで磨き上げる
(※左2本は磨く前、右は磨いた後。光の輝きが全然違うのが分かる。)
鏡のように光るまで磨く

ハンドル材の選別
裏と表の模様を合わせる
工場で大量生産する場合は裏と表で全然バラバラだが、ハンドメイドはそれを合わせる事が出来るのがメリット。
ハンドルの素材は裏と表で同じ模様、形、質のものを選ぶ

素人目には一見どれも同じに見えてしまいますがなるべく同じ模様を選び抜くのもプロの目が光ります。


部品を組み合わせる
1つ1つ出来上がった部品を組み合わせていきます。
部品を組み合わせていく

組み合わせる瞬間がドキドキ
組み合わせる瞬間がドキドキ

だんだんとナイフの形に
だんだんとナイフの形に

組み合わせが完了しナイフの形が出来上がりました
組み合わせが完了した様子

また、ピンの位置を全て揃えるのは至難の業!5/100mm以下の隙間も見逃しません。

100mm分の5mm?!

5/100というと・・・
100分の5の隙間

隙間を判断できるか出来ないかの境目が5/100mmと言われているそう。

「隙間から光が見えるでしょう?(^^)」

と川村さんはおっしゃいますが、言われてみれば空いているような・・・?程度。
100分の5の隙間の拡大

そしてその5/100のズレが出てくるのがこちら!
ハンドル部品を組み合わせていくと・・・
ハンドル部品を組み合わせていく

1つ1つ削ったとは思えないほどのズレのない整った側面。
ズレのない整った側面

川村さん曰く、全て重ねたときに中に入れ込まれたナイフが見えないこと、また中のナイフを出した時でも側面が変わらず真っ平にすることが非常に難しくプロとアマチュアを見極める箇所でもあると言います。
組み合わせて初めて分かるプロのすごさ

もしピンが5/100mm位置がズレていたらこのようなキレイなナイフは完成していないでしょう。川村さん流石です・・・!!


ピンを埋め込んでかしめる(ピンが見えないように埋め込んで消して磨く)
※ピンが見えたらナイフ職人としてアウト。
さらにインレイと呼ばれるアクセントとなる飾りも同じようにしかめていきます。

このインレイも1枚の板から削って作り上げる部品の1つ。
こんなに浮き出ている物を・・・


最終的にはここまで埋め込む。
インレイを埋め込んだ完成品

貝のような平らなものは直接インレイの形にかたどり貝を形通りに彫っていくのですが、鹿の角など凸凹しているものはかたどりが出来ないため、インレイの真ん中にあたる部分から小さく掘って徐々にインレイの形まで広げていきます。一切のズレも許されないためイメージと感覚が研ぎ澄まされる、なんとも根気のいる作業のうちの1つです。
インレイをはめるのは根気のいる作業のうちの1つ

作り始めの頃は掘っている間にハンドルにヒビが入ったり時には割れてしまうことも。そうなるとハンドルだけではなく0から全てやり直し。ハンドルの素材が生かされたナイフなのでハンドルの素材がなくなれば例え同じ素材だとしても代用する事は出来ず、テンプレートから作り直さなければいけないのです。



こだわり

“良い意味で気持ちを入れ込み過ぎない事”
1本に気持ちを込めすぎると自分のセンスが出すぎてしまい、自分のセンスだけでつくるとおかしな方向になってしまう、と川村さん。国やその時々によってニーズも流行りも変わるので”自身のスタイル”に入り込みすぎず、”ディテールにとことんこだわる”ことに集中しているという。「良い意味で気持ちを込め過ぎない方が意外と良いものが仕上がる事が多いから」というのも川村さんらしい一言。



ナイフはどうやって作るの?

ナイフを作っていてここが分からない・・・という方に考案したという川村さん自作のナイフ製作解説本!1冊3,000円で販売しているそうです。
川村さん作のナイフ製作解説本


イベント情報

海外では週1~月1、日本では2ヶ月に1回で開催されるイベントに参加。

東京フォールディングナイフショー
開催日時 平成27年2月21日(土)11:00~17:30
場所 高輪和彊館(たかなわわきょうかん)
住所 東京都港区高輪4-10-56
入場料 無料
※どなたでも入場できます
※ご来場の際、お客様所有のナイフ類はご持参されませんようお願い申し上げます。



ヤミーから皆様へ

ナイフには”危ない”、”怖い”と言ったイメージがありますが、思いもしない美しさに見とれてしまいました。川村さんが長年ナイフに費やし培ってきた技術や独特の創造力は、妖しくそして美しく、そのナイフに魅了され、世界中のナイフコレクターに衝撃を与えています。川村さんファンが多いのにも納得です。こうした職人さんがこれからも絶えず増え続ける事を願います。


ナイフメーカー 川村龍市

【 オーダー・お問い合わせはこちらから↓ 】
HP:http://www008.upp.so-net.ne.jp/ryu-knives/top.html
mail:ryu-k@gc4.so-net.ne.jp


 RSSリーダーで購読する

 ,,

▼関連記事